2004年の晩秋から暮れにかけて、私の顔は青ざめて目だけが血走っていました。
異常に高いPSA、生検結果は病期T3の局所浸潤がん、おまけに悪性の低分化がんだと言う。
当初の主治医にははっきりした治療方針を示してもらえず、
自ら求めたセカンドオピニオンでは、今思えば疑義はあるものの「5年生存率2割」という、
当時の心理状況からするとほとんどだめ押しとも思えるような宣告を受け、
もっと良い治療法、もっと良い医療機関を求めて、何週間もパソコンの画面を食い入るように見つめていました。
医療技術の発展と共に、前立腺がんの治療法はすでに多選択時代を迎えたと言われています。
にもかかわらず、医療機関のホームページを見てみると、
「全摘術」「放射線療法」「ホルモン療法」の3つ、あるいはそれに「待機療法」を加えた4つの治療法の中から、
患者の病期(T1〜T4)に応じ、妥当と思われる選択肢を提示しているにすぎません。
PSA(前立腺特異抗原)が高く、GS(グリソンスコア)も大きい低分化がんでは、時として、一段上の病期より、
さらに生命危険率が高くなる場合もありうるわけですが、
病期以外に当然からんでくるはずのPSAやGSが、治療法解説の与条件としては、完全に抜け落ちてしまっているのです。
国立がんセンターのホームページもその例外ではありません。
患者は複雑なことは何も知らなくとも良い、すべて医師にまかせておきなさい!という意味なのでしょうか?
がんの「告知」はインフォームドコンセント(説明と同意)からインフォームドチョイス(説明と選択)へと
向いつつあると言われていますが、医療者と患者間の情報GAPをこのままにしておいて、はたしてそれが可能でしょうか?
欧米には「診療(治療)ガイドライン」という標準治療の虎の巻が存在し、
医師もそれに基づいた治療を施し、患者も事前にその内容を知ることにより、医師と同じ土俵で意見を述べ合い、
自分で判断を下せるしくみが整っています。
日本でも2005年になってようやく厚生労働省も本腰を入れ始め、現在泌尿器科学会に於いても
診療ガイドラインを作成中とは聞いていますが、さてどういうものなのか、今から興味津々です。
2006年に出版された診療ガイドラインは、残念ながら、患者向けの治療ガイドブックではなく、
医者が患者の問いにいかに「あたりさわりなく」答えるかと言う「Q&A集」でした。・・・注:2008年
がんの世界では主治医(医療機関)の選択が天国と地獄の分かれ目となることも珍しくありません。
たまたま良い医師に恵まれた幸運な患者は別として、
治療法に関する基本的な知識が無ければ、セカンドオピニオンを求めたくてもその心当たりさえ見当つきかねてしまいます。
患者にとって自分の身を守ろうと思えば事前に最低限の知識だけはどうしても知っておかねばならないのです。
前立腺がんの治療体験(「前立腺がんを患って」)と、
その間に上達した前立腺がん情報収集のコツを、あとに続く同病患者の為にお役に立てることはできないだろうか・・・
青ざめた顔で情報の海でもがいていたあの時、私自身が一番出会いたかった情報サイトが作れないだろうか。
エビデンスのある新しい情報のみをコンパクトに集めた、”前立腺がん患者の為の道しるべ”は
一介の患者の仕事としては荷が重過ぎはしないだろうか。
2005年秋、武者震いと共に逡巡を捨て、この実行に着手、約2週間をかけてこのサイトの原型をアップしました。
さらにその後、NCCN(米国がんネットワーク委員会)「前立腺がん治療ガイドライン」に見られる、「期待余命」に応じ治療法を変化させる
軽快かつ大胆な考え方と、極めて合理的な「リスク群」の考え方に触発されて、内容のかなり大幅な追加修正を
行い現在に至っています。
本稿には「前立腺がん治療法早見表」を始め、オリジナルの図解資料も多く取り入れています。
ぜひじっくりご覧ください。
今後とも折りに触れ内容の充実をはかっていくつもりですが、あの時、
「私自身が一番出会いたかったサイト」が、その後数年を経てようやく形となって現れて来ました。
もしもあなたが”前立腺がん”を告げられたら・・・どうか、あなたの乾いた喉を潤す安息の水が、このサイトの中で見つかりますように!
- 国立がんセンターの「がん情報サービス」など、国内で広く認知された信頼度の高い治療法から先にお読みください。
- 第一章(§・1) 図(挿絵)を増やして見やすくしました。・・・ 2008年春
- 第二章(§・2) 治療法、加筆訂正・・・ 2011年1月
- 第三章(§・3) 新薬情報等の加筆・・・ 2011年1月
- 第四章(§・4) 前立腺がんの後遺症を追加(元の第四章は第五章に変更)・・・ 2012年3月
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