2003.5/2〜5/4

第15回萩往還250kmマラニック
"絵日記"
(4)



 16 笠山

玉江駅 193.9km 到着 3:40 (5/4)
玉江駅 193.9km 出発 4:10 (5/4)
笠山   204.4km 到着 6:10 (5/4)

笠山

最後の踏み切りを渡って海岸線を離れ、影絵の街を縫うようにして玉江駅に到着。
一息入れていると、宗頭からここまでずーっと御一緒した女性がそばににじり寄って来た。
「これからもずっとついて行ってもよいでしょうか」と瞳をのぞきこむようにしてささやく。
長い人生でもこんな経験はめったに無い。
どうせ胃をいたわりながらだから、早く走るわけでもなし、多少時間がずれたところで ゴールさえできりゃあ大差なかろう。
徐々に彼女の目が光を帯びてくる。
へびに睨まれた蛙のごとく、硬い表情のままのまま"うんうん"とうなずいてしまう。

女性2名とフロクに男が一人付いてきた。(^^;;;
萩城の前を過ぎる頃には、星も徐々に輝きを無くし、海岸線の向こうから3日目の朝が忍び寄ってくる。
海に浮かぶ小島や半島を眺め、走りというよりほぼ歩き旅だ。 明神池へ向う途中、ビッコを引いてリタイヤ寸前と憶わしき青年が立ち止まっている。 痛み止めを提供、聞けばコースも不案内とのこと。
「よければいっしょに来る?」
これで男3名、女2名のグループが出来上がった。

笠山はらせん状に登る。
地図で見るとほぼ1周するだけにもかかわらず、いつまでもぐるぐる登り続けているような 気になってしまうから不思議・・・バベルの塔もかくありなむ?
「火山」笠山の噴火口が頂上付近にあるとか。まだよう見てませんけどネ。(^^;
 
 

 17 虎ヶ崎

虎ヶ崎 207.1km 到着 6:45 (5/4)

虎ヶ崎

笠山から虎ヶ崎一帯は椿の群生林として有名。 笠山から一気に下って半島の北端が虎ヶ崎。
ここの食堂を「椿の館」と言う。お姫様がでてきそうな名前だが 迎えてくれるのは地元漁協の婦人部のおばちゃん達。
ここは炊き込みご飯が美味しかったのだが、 うどん定食しかないと言われちょっとがっくり。
帰り道は来た道を戻ってもよし、崎を一周してもよし。・・・ 後者を選ぶ。
道は悪いが椿群生林の麓を通れて海がすぐ近くに見られる。 大きく登る必要も無い。同じ道を戻るよりゃ気分転換にもなろう。
突き進むとやがて笠山の上り口付近で元来た道と合流する。
 
 

 18 東光寺

東光寺 215.3km 到着 8:40 (5/4)

東光寺

明神池から萩焼会館までの復路はまだこれから虎ヶ崎へ向う人達とすれちがう。
今年からコース変更となった「140kmの部」の人も混ざっている。
小さな鉄製の橋を渡ると松下村塾から東光寺へ向う萩市内観光のメイン道りに出る。
足を痛めている青年も杖をつきながら遅れじと懸命についてくる。
観光客に「どこまで走るの?」とか聞かれるのも大抵このあたりだ。
毛利氏の菩提寺である東光寺に到着。
ここは黄檗宗の寺として宇治の黄檗山万福寺を範に建立されたとか。
萩往還250km最後のチェックポイント。8時台だから時間的にはまだかなり余裕がありそう。
ちょっとホッとする。
歩きが多くなったせいか、終盤になって胃もどうやら調子を取り戻してきたようだ。
 
 

 19 一升谷の石畳

一升谷の石畳

萩有料道路料金所から山の中に入る。
去年は雨の中、このあたりでリタイヤしてしまった。 好天の今思い返すと、あの時なぜリタイヤしたのかが不思議なくらい。
明木市から道はまた一升谷の山道に入る。 ここから先は6年前の140kmを走って以来。
かなり記憶が飛んでいるものの、覚えのある景色に触れると涙ぐむほど懐かしさがこみ上げてくる。
一升谷の急坂にあえぎつつも石畳に頬ずりしたいぐらい。
すれ違う「歩け歩けの部」の方たちの声援がまた胸にジンとくる。
一升谷を登り切るとポンと明るい風景の中に飛び出る。まるで映画のスクリーンを見ているよう。 一部車道を走ったり横切ったりはするものの、鄙びた山村そのままの風景が、佐々並へ向う途中に次々と展開する。 一度しか見てないはずなのに、すでに何度も見た風景の中を進んでいるような気がしてくる。
これもデジャヴだろうか、なんともいえぬ近親感、安心感があり、ユートピアってのは きっとこういうところだろうと勝手に納得する。

夢と現実がもつれあったまま昇華し、眠いはずの頭脳も妙に興奮して、ともかく嬉しくてもう地に脚がつかない。
体は疲労でずしりと重くとも心ははるか天空を舞っていた。
 
 

 20 ゴール

瑠璃光寺ゴール 250km 到着 16:48 (5/4) → 46時間38分(制限時間48時間)

ゴール

佐々並でとうふをよばれた後は、最後の難関の長い長い登り坂。 登りつめると御褒美によもぎ大福が味わえます。・・・ おばちゃん、おひさしぶり!  また頂戴させてもらいますよ。
板堂峠を越すとあとはもう下るだけ。
ずっと杖に縋ってびっこを引いていた青年が、なんとここで杖を投げ捨てた!

自然と気分が高まって、ところどころに石畳がのこる山道を勢い余って飛ぶように下る。
70kmや140kmのゼッケンを付けてカニの横ばいのようにそろそろ降りている人を「ごめんなさいネー」と 言いながら追い越すと、「あれぇー」とか「すごぉー」とかの声が背中から追っかけてくる。
気持ち良いことこの上なし(笑)。
ここまで一緒だった5人がバラけてしまったものの、最後はやはり一緒にゴールしようと思い直し、 山を抜け出た天花畑で半時ほど自販機のドリンクを飲みながら他の人の到着を待つことにする。
板堂峠の下りで、勢い余ってそのまま駆け下りていったであろう男性一人は見失なってしまったけれど、 残った4人で最後の数キロを一緒に走ることにする。
一ノ坂ダムの深い碧の水面を右手に見ながら下っていると、とうとう戻ってきたという安堵感で体がふっと軽くなる。 眼下にちらほら見えていた山口の市街が右へ大きくカーブするといきなり目線の高さが屋根よりも低くなった。

瑠璃光寺前のゴールへの花道は両側に人が立ち並び、先にゴールした人、応援に駆けつけてくれた人など、 たくさんの知り合いが、暖かい拍手と笑顔で迎えてくれました。
感動の涙に暮れるわけでもなく、記念撮影のカメラに向けて手を振るだけの平凡なゴールでしたが、 じんわりと心安らぐゴールでした。
・・・眠気さえ襲ってこなければ、はるかどこまでも進んで行けそうに思いながら。

じわっとまぶたがうるんだのは、翌日帰りの新幹線で一人車窓の人となってからのことでした。
 
 
                    

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