第16回 萩往還(250km)マラニック大会

ひげの父さん@宝塚

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1月〜2月は故障もあって練習不足だったのが、3月の走り込みで(と言ってもせいぜい280kmだが) かなり調子が上向いてきた。
萩の3週間前に、もう一鞭入れておこうとロングランを計画したところ 30km前後で右足底筋が張って来て最寄の駅で切り上げてしまった。
この時はさして気にも留めなかったのだが、 翌週、リベンジのつもりでまた同じコースを走ったところ、 こんどは20kmぐらいで同じ場所がズキンと 痛み、大会直前でもあることだし大事をとってすぐに走るのをやめた。
後で振り返るに、3月下旬の「六甲全縦」以来、足裏保護のつもりで インソールを2重にしていたが、ソールが硬すぎてかえって足底筋に 負担をかけてしまったような気がする。
ヤバイと思ってから2週間、堺シティマラソン、長居練習会などの 催しでも一歩も走らず、ひたすら養生につとめて、 5月2日の萩往還マラニックを ぶっつけ本番で迎えることとなってしまった。

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瑠璃光寺 (残250km) 周辺にはすでに約400名のランナーが集まっていた。 もう一つの超長距離マラニック「さくら道」がなくなった影響もあってか、 今年は参加者が多い。
足よ持ってくれ!と半ば祈る気持ちでスタートラインの後方に並んでいると、 悲しいかな、スタート前に雨がぱらつき始めた。
第6ウェーブ(後ろから2番目のグループ)で 6:25に瑠璃光寺をスタート。
足が痛み出した場合を想定して登山用ステッキを購入、 宗頭に預けておいたのだが、はてさてステッキの出番はあるのか。


(瑠璃光寺五重塔)

瑠璃光寺五重塔

上郷 (残236.6km) から先の自転車道路、二本木峠の手前(18〜19km)でブラインドランナーの宮本さんと その伴走者グループ(春井さん、藤井さん)に追いつき併走する。第3ウェーブ 6:10 の スタートだったらしい。
練習時に足が痛み出した魔のポイント20km、30kmは何事もなく無事通過。 スタート後うまい具合に止んでいた雨も、途中からまた降ったり止んだりの繰り返しとなる。

西寺エード (残206.1km) まではほぼ予定通りのペース。
スタート前には、早々に足が痛み出した場合、最悪、西寺でリタイヤってなことも起りうるかと 心配していただけに、ひとまずほっとする。


(西寺エードに到着)

西寺エードに到着

踏み切りを渡ってからゴルフ場のある山を越えるのだが、 初めてのときは暗くて気味悪い印象だったのだが、 今回は妙に空全体がぼんやりと明るく、照明なしでも足元が判別できるぐらいで、 ちょっと拍子抜けだ。 ほぼ満月と思しき月の光が、低く垂れ込めた雨雲の裏で乱反射しているせいだろう。
昨年は気分良く走れたゴルフ場からの下りも、ふくらはぎや尻の筋肉があちこち張って来て、 なかなか軽快には走れない。

豊田湖切石亭 (残192.6km) には宮本さん達よりいくぶん遅れて到着。序盤の割りにはかなりの疲労感。 中が満員だったので、外のテント下のテーブルでうどんとおにぎりを食べる。 宮本さん、春井さん、藤井さんは先にスタート。
一人で俵山温泉へ向かう。時々眠くなるものの、今年は腰痛が出ないだけまだましか。 激しくはないもの、雨はずっと降り続いている。
筋肉痛もこの辺までくると徐々になくなって来たような感じだが・・・ 頭が鈍感になって来てるだけかもしれない。

俵山温泉 (残184.0km) のエードはあっさり通過、坂を下って四辻に出たのは良いが、 砂利ヶ峠は「右方向」という記憶の地図にしたがって 四辻を右へ折れてしまった。
直進して道なりに自然に右へ曲がって行くのが正解だったのだが・・・。
引き返し、本来の道へ戻りしばらく行くと、 雨の中、前方にきらりと道標らしきものの輪郭がライトに浮かぶが、 水滴だらけの眼鏡に乱反射し、確認する気にもなれずそのまま進んでしまう。
帽子を目深にかぶっていたため、足元以外が見えにくかったせいもあろう。 本来、その三叉路で左へ行くべきところを右方向に進んでしまい、 おまけに、後ろから付いてきた4〜5人を道連れにしてしまった。(冷汗)
後で聞けばベテランクニさんもここでミスコースをやらかしたとか。
2回のミスコースで計40分近くロスしたもよう。まあ、こうなったらあせっても仕方がない、 のんびりいこう。

砂利ヶ峠 (残180.2km) を歩いて越える。
重たかった体が、ミスコースで遊んでる間に少し楽になってきた。
気分良く峠を下り始め、同行のグループをかなり引き離したと思った頃、 突然、例の足底筋が弦が弾いたようにビクンと痛んだ。イタタッ!
やっぱり完全には治っていなかったのだ。
残りの距離を計算し、その後の展開を予想すると身震いがした。
ここからは右足の様子を見ながらまだまだ長い下りをそろそろ走る。 右足をかばいながらだとどうしても左足がつっぱってしまう。

大坊ダムエード (残174.2km) に到着。いつもならまだ真っ暗なのにもう夜が明け始めている。
豚汁がうまい。ふと隣で女性の声がした。黄色いカッパの中を覗きこむと毛利さん。 彼女もかかとが痛いとか。
ここのエードの長谷川ゆかちゃんはひげ面の顔だけは覚えてくれてて 「毎年走られてますよね」と声をかけてくれた。 去年は少しおしゃべりもしたし写真まで撮ってくれたので、良く覚えててくれたんだろう。 冷や汗をかきながら「毎年じゃないけどね」と言い訳をする。


(大坊ダムエード)

大坊ダムエード

油谷の街に入ると雨があがって雲も薄くなってきたよう。
かかとを痛めて下りではゆっくりしか走れなかった毛利さんが「平地の方が足に楽」といいながら、 ギヤチェンジして遠ざかるのを見送ってから、 道端の石に腰を下ろし、雨のためふやけた足裏の手当てをしていると、 こんどはくーさんがトコトコといつものペースでやってきた。
靴下を履き替えてから、くーさんに追いつき併走する。

海湧食堂 (残163.8km) ではさたさんと海宝さんがお手伝いをされていた。
過去2年、ここで食べたものはきっちり戻している(苦笑)。 今年は大丈夫。おそらく初めて試した胃薬が効いているのだろう。 念のため、食事の後には消化剤と吐気止めも飲んでおく。
今年から荷物置場がこの近くの油谷中学校に変わった。
新しい靴下のストックを取りに立ち寄って、再度靴下を履きかえる。
私の足の裏は水に弱い。長風呂をしても足の裏がすぐに白くふやけて 皺だらけになる。 胃が元気だし、足がすっきりしたので、なんとなく気分が良い。
砂利ヶ峠の下りでズキンと来た右足も、その後軽い痛みやつっぱり感は あるものの、さほど気にならなくなってきた。

俵島 (残152.7km) へ向う途中、折り返してくる知人に次々と出会う。
宮本さん、春井さんともすれ違ったが、 始め一緒だった藤井さんは少し遅れている。 一時はこのグループに完全に離されたかと思ったけれど、 さほど大差でないことが確認できた。
急な登りは歩いたものの俵島で折り返し川尻岬方面の分岐まで戻る間はかなり 良いペースで走れた。
予定より40〜50分遅れだったのを、ここで一気に30分ほど取り戻せた。
ビールとアイスクリームで一休憩。 この辺からしばらくは牧野さん、藤井さんとは追いついたり抜かされたり。


(俵島折返し付近)

俵島折返し付近

川尻岬の手前のT字路に突き当たるまではじわじわと登る道だ。 先ほど快調に走った疲れか、休憩で緊張が途切れたせいか、歩きが多くなる。

瞬時小さな青空が覗いた。(3日間でこの時だけ)
暑くなりそう・・・と思ったのだが・・・。

川尻岬(107.2km) (残148.8km) でカレーを食べる。胃が元気なので嬉しい。私のすぐあとでカレーが品切れになった、ついている!(笑)
川尻を出てしばらく走ると、また雨がぱらついてきた。
棚田から眺めると頂上付近に風車が2台見えるあたりが千畳敷だ。 霞んでいるので余計遠く感じる。
シーブリーズ(喫茶)ではミックスジュースを飲みながら、 ケータイで所要時間の報告を掲示板に入れようとするが、どうもすんなり行かない。 骨が折れるおもちゃだ。


(棚田を望む)

棚田を望む

立石観音 (残132.8km) へ向う上り坂で藤井さんとはぐれてしまったが、またどこかで追いついてこられるだろう。
夫婦岩も雨に煙り、かなり近づかないとその輪郭がはっきりしない。
チェックライターの位置が去年までとは変わり、祠へ登る階段の下になっていた。


(立石観音夫婦岩)

立石観音夫婦岩

津黄峠への登りで関東方面から来ている人と一緒になる。 話をしながら歩いていると千畳敷までの急勾配も苦にならなかった。

千畳敷 (残125.4km) では雨はまだ降っていなかったが景色もどんよりとし風が強くて寒い。
発電用の風車がカラカラと大きな音をたてて回っていた。
頂上カフェのテイクアウトソフトクリームの窓口も閉まったままだった。 今日の天気じゃ売れないだろう、早々に下山する。


(千畳敷)

千畳敷

このあたり(全コースの約半分ほど)から不思議なことに、右足の足底筋の張りや違和感は、 ほとんど気にならなくなってきた。
しかし、安心するには少々早すぎたようだ。 ・・・ 今度は左脚のスネに沿った筋が少し張り始めて来た。
西坂本へ向う下りで調子が出始め10数人を追い抜く。
前方に小さく宮本さんと春井さんを発見、ふと横をみると道端で休んでいるのは牧野さんだ。 膝が痛み始めたとの事。手持ちの痛み止めを提供する。

西坂本(128.6km) (残121.4km) のエードで宮本さんと春井さんに追いついた。藤井さんの様子を尋ねられたが 良くわからない。たぶん今頃は千畳敷あたり?
カップラーメンのあと味噌汁を注文していたらまた先を越されてしまった。

黄破戸峠 (残118.4km) の先でINAIさん、山田さん、牧野さんに追いつく。
宮・春ペアの背中が見えるので少し立ち話をしただけですぐまたその後を追う。 黄破戸漁港で追いつき、ここからは一緒に走る。
境川交差点を左折し、国道を走り初めてからは徐々に雨脚がきつくなり、 すれ違う対向車の跳ねあげる水しぶきがまともに顔面にかかる。
川のような歩道で足裏のマメがブチンと音を立ててつぶれた。ウッ!
濡れ靴下のままだとマメが悪化しやすいので、 一人長門市内のスーパーに飛び込んで、軍足を半ダース仕入れて履き替えてみる。
しかし、その後もなかなか止んでくれない雨に完全にお手上げ、 あとはもうどうにでもなれと居直ってしまう。

仙崎 (往:残107.7km) エードにリュックを預け、鯨墓へ向う。

静ヶ浦キャンプ場 (往:残101.4km) では腹が空いていたので私だけ先に立寄り腹ごしらえをする。 宮・春ペアはそのまま先へ。
腹を満たしてからあとを追う。

鯨墓 (残97.2km) では、本来西寺担当のスタッフの○川さんといっしょにふじもっちゃんが 雨の合間を縫って出迎えてくれていた。
鯨像の前には去年いろいろとお世話になったここの常連スタッフ○野さんのなつかしい姿も。 しばし歓談のあと折り返す。


(鯨墓のスタッフと再会)

鯨墓のスタッフと再会

静ヶ浦キャンプ場 (復:残93.0km) まで引き返した所で、宮・春ペアがすでに通過したものかどうか迷ったが、おそらくまだ食事中と判断して 立ち寄ってみる。予想通りだった。

仙崎 (復:残86.7km) に戻る道は途中からライトを頼りの暗夜行路となる。
仙崎より宗頭へ向う国道では宮本さんが眠たそう。
途中春井さんも眠気からふらつきはじめ、しばし伴走を交代する場面も。
バイパス道へ出たあたりから雨はいよいよ激しくなってきた。 カッパは着ているものの、ロングタイツの水濡れが気になりだしたので コンビニでレインコートのズボンを買って履く。
滝に打たれたように全身ずぶぬれとなり、11時少し前に宗頭文化センターに到着する。

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