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島民大運動会文・イラスト / 貴船庄二 今
、日本全国運動会の秋真っ盛りである。
天高く馬肥ゆる秋などはもう古い懐かしい言回しで、当今はマイ・カーで駆けつける運動会の秋である。 運
動会の前日、児童生徒・教員・青年たち・公民館役員・PTA会員つまり島のほとんどの人が参加して会場造りを行う。
万国旗を張り巡らし、いくつもテントを建て、入場門を造る。
この入場門は島のいたるところに自生するリュウキュウ竹の若いやつを数十本切り、
紐で束ね継ぎ六メートル程の太い棒状のものを作り、両端からそれを押し立てると馬蹄型のアーチになる。
そしてグランド入口に立つ石柱門にくくり付けるのだ。
それから竹を縛りつけた紐に杉の枝葉をいっぱい差し込んでゆくと、
みるみるうちに竹のアーチが濃い緑の杉葉で覆われ何か豪華な感じになる。
造花で縁どった横長の祝島民大運動会とペンキで書かれたカンバンを取り付け、
杉葉の中に万国の手旗をそれこそいっぱい差し込む。
ハイ出来上がり。フッハッハ〜何か愉快なのだ。 運
動会当日朝六時、花火の大音響で開催が知らされる。バンバンバン、はい今日は運動会ですよ〜。
朝八時半、小中学校のグランドで島民の入場行進から始まるのだが、妻は大概遅刻する。
昼食の弁当作りに手間どり、急がせればハイ、ハイと返事はよいのだが、しまいに仏頂面となり余計に手間どる。
そこで妻だけ残して先に出掛け行進に参加する。
妻は料埋は合格なのだが実務の才が限りなく0に近いといってよい程欠落している。
その度に私は今後妻を娶る時は実務に長けた女にするぞ!と思うのだが、勿論妻にも言い分があって、
家事など見向きもせずロクに仕事もせず、こと更金などに縁の無い私であってみれば、
まあ文句の言えた身分でもないのである。 昨
年から小中学校と島民の競技を織り交ぜた運動会となった。
小学児童7名、中学生徒は海の子留学生2名を入れて4名、計11名の子供たちが島民の競技と交じって参加する。
老齢化率40%に近いこの島では当然であろう。 金
岳(かながたけ)
小学校においては児童生徒1名か2名に先生がついていて基礎学力で落ちこぽれるということはない。
島の小学校を卒業して鹿児島の高校に進学した女子生徒は言う、
同級生が沢山いて答えさせられることが少なくなりちょっとホッとしたよと。成る程ね。 一
つ競技に出れぱ必ずタワシやプラスチック容器やらを貰い、一年分の雑貨稼ぎにはもってこいで、
我が家族は人数の多さにもの言わせて稼ぎまくる。
ウッハッハ〜、溜まった溜まった。 昼
前、新顔紹介と銘うった種目があって、その年新たにこの島の住民となった人たちを島民に紹介するのだが、
今年はUターンした二十歳前の青年エイイチとトヨシゲ、海の子留学生で中学二年のマリコとケイスケ、私の孫娘モエ、
新任のお姉ちやん先生と学校事務官の奥さん、そして広島大学の学生三人が加わってにぎやかな顔ぶれであった。 新
顔の人たちを入れて皆でおはら節を踊って、さあ昼食だ。
広い体育館の中にそれぞれ家族は円く陣どり、学校では御法度のビール、焼酎も今日は解禁でにぎやかなお弁当を開くのだ。
さて我が家のごちそうはいなり寿司、のり巻き、鶏のからあげ、つけ揚げ、フルーツかんてんで、
漁師のゴトウオジがシツとモハメの刺し身を提供してくれた。
私はこれが大好物なのだ。やはり子供たちはこのにぎやかなごちそうが楽しみだ。
たらふく食ぺた子供たちはもうグランドに出て遊び回っている。元気なものだ。 職
場別対抗リレーで強いのは何といっても教員チームで、常日頃子どもたちと走って鍛えているから何時でも臨戦体制OKだ。
それに比べて他の職場はにわか仕立で、欠席が出ると他から足の連いのを確保しようとやっさもっさとなる。
だいたいにわか仕立チームは威勢はいいのだがどこか浮き足だっており、はたで見ていると何やら可笑しい。
今年の最強チームはやはり教員チームで、ウーム憎らしいかぎりである。
最後の紅白応援合戦も終わり、小中学校の優勝チームは白組であった。
一通りの閉会式を済ませ怪我人も出ず、年一度の大運動会はかくて終わった。 翌 日、飲み遇ぎて頭をふりふり眼は赤く、足をひきずり、イテテと腰をさすり今日一日の仕事に向かうのである。 又来年の今日も全くこの通りであることは間違いない。 |
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