脱走事件

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■99/8/某日

昨夜、局地的な雷雨があり、このあたりも断続的ながらかなりの雨がふった。 寝たら起きない健が、「雷が光って目が覚めた」と言うのだから相当だったらしい。
---らしいがつくのは、私はそれも知らずに良く寝ていたからなのだが、ともかく、 朝はそのガラガラピカピカの残り雨でカンの散歩は省略。
物干場へ出る勝手口だけカンのオシッコ用に開けて、 奈緒に後でカンを散歩に連れていくように言って出かけた。
この日は役所へ行く用事があって車ででかけ、昼ごろ車を置きに戻ったら、 いつもはベランダから喜んで吠えるカンがいない。
奈緒に聞くと、起きたらもうカンがいなかったとの事。

---どうせまた朝寝坊だろう、コンニャロ〜

脱走には、けっこう前歴があって、(平均 1回/2ヶ月 ぐらい)探しに出て見つけるか そのうち勝手に帰ってくるかどちらかで、奈緒も気にはなりつつほっておいたらしい。

---もっと真剣に探してやれ!コンニャロ〜

* * *

近所の散歩道をグルッと回ってみるが見つからない。
そうこうしているうちに電話があって、「おたくのイヌを保護しています。」との事。 あわてて、場所を尋ねると売布3丁目、中国縦貫のそばとの事、2Km以上も離れている。 普段の散歩道ではなく、清荒神ルートのランニングコースだ。

清荒神ルートは中山寺から奥の院方面の山中を通って清荒神に降り売布の 中国縦貫道を越えるか潜るかして帰ってくるわけだが、 まさか一人でそのコースを行ったとはおもえず、逆走だろうとは思うが、 知らせてもらえなかったらはたして一人で家まで帰れただろうか?
これまでたまに脱走していた時もこんな所まで勝手に遠征していたんだろうか?

* * *

奈緒をつれて迎えにゆくと、先方の飼犬(黒い丸々した犬)と一緒に、 家の前の駐車場に繋がれて、お母さんとおばあちゃんがこちらの到着を 待っていてくださった。
きっと心細かっただろう---顔をみたら狂喜して飛びついてくるだろう--- と思っていたのに、御本人は以外に平静でリードを引張って駐車場の 門扉の下をかいくぐりこちらへ来ようとするだけで、吠えもしなければ、 飛びはねもしない。

---もっと感動しろ!コンニャロ〜

* * *

あずかってもらった家では水やエサをもらったらしいが全く口を つけなかったそうだ。
あずかってくれたお母さんはその事に感心して、しきりに「賢いわんちゃんだ」と言ってくれるが、 実は我家でも中途半端な時間の餌は 特に好物でないかぎりあまり食べないだけなのだ。

さて、予期しない場所で発見された脱走騒ぎだったが、 はたして本人は迷子になって困っていたのか、ひょっとして、勝手気ままに 散歩しているところを、よってたかって邪魔をされたと思っているのか?
ともかく、以前よその迷子犬を見つけた時、すぐ連絡がとれなかったのを教訓に、 首輪に名前と電話番号を書いておいたのが今回は幸いした。

* * *


■99/09/某日

帰宅するとカンがまた脱走してまだ帰っていないとの事。 こちらもだんだん探し回るのがばからしくなってきた。 どうせそのうち勝手に帰ってくるだろう。

案の定、暫くしてガラス扉を外からカタカタこする音。
わんぱく息子のお帰りである。
一応は叱るのだがどこまで理解しているか知れたものじゃない。
「あれ、怪我してる!」と家内の声。
見ると左眼の外側に引っかき傷があり血がにじんでいる。
鼻の頭にも掻き毟られた跡があり、黒い鼻先のこれも左側が 肌色に剥げてしまっている。

もともと、2枚目とは言いづらい顔なのに鼻先が剥げてしまっては どうしようもない。

* * *

犬と喧嘩をしたか、あるいは猫にやられたのかも知れないが、多分 猫だったらもっと爪の跡がはっきり残っているはずだ。
きっと犬の前足でやられたのだろう。
たいした怪我ではなさそうなので医者に見せるほどでもなさそうだが、 鼻の頭の剥げてしまったなさけない顔だけはどう見てもいただけない。

* * *

2週間程してふと気がつくと、鼻の頭の剥げ跡がやや黒ずんできている。
剥げたままかと思って心配していたが、どうやら元に戻りそうな気配だ。

それから4〜5日ほどで見事に鼻の頭が元に戻った。
いい顔に戻ったか、と尋ねられるとやはり答えに窮するのだが---。

■99/10

最近、"脱走"の頻度が高くなってきた。
夕方には一人で帰ってくるからまだ良いようなものの、 月に数回こっそり姿をくらます。
餌を食べさすのはもちろん、 散歩は朝晩ちゃんと連れて行くは、たまには飽きるほど山も走るは、 風呂も入れてやれば、ブラッシングもしてやる、寝るのも隣、 どこが気に食わんと言うのだ。
ばからしくて探しに行く気もしない。
一度、かなりこっぴどくしかってやったのだが、1日2日は時々 こちらの顔色をうかがうようなそぶりをみせちょっとおとなしいのだが、 なにせ長続きしない。


この写真のようにベランダで外を眺めて暮らすのが 性に合っているらしく、こちらは少々寒いのを我慢しても なるべくベランダのガラス戸の鍵はかけずにおいてやるのだが それをいいことにベランダの手摺を越えて脱走してしまうのだ。
傾斜した地盤の上に建っている家なものでベランダの先の方では 手摺から地盤面まで2mを超える高さなものでさすがに飛び降りは しないが、ベランダの付け根の方では1.5mほどでここを エイヤッと超えてしまう。
ふだんから山道を走ったり、時には岩場をかけ登ったりもしているので、 このくらいのことは実にあっさりとやってしまう。


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